弁護士への連絡⑪

一夜明け弁護士へ連絡を入れる。

こちらからの言い分を伝えたところ、弁護士もある程度の理解を示してはもらえたが、裁判は証拠が最も重要であって相手方が父の帳簿を持ち出し証拠として出してきた事に対して、そうでは無いと言う証拠の提出が必要だと伝えられた。

仮に長男の件で言うと、兄は400万円借りたと言い、姉は400万円贈与されたものであると主張している場合、兄に400万円は借り入れであってその返済をした証拠を示さなければならない事となる。

正直、親子間での金銭の貸し借りで借用書などを作成する事は稀であるし、今の時代であれば、SNSやメールなどで記録が残っているかもしれないが、なんせ40年近く前の事である。返済が終わったからと言って、親に対し完済証明をもらう事などもないだろう。しかし、それが法廷という場所では借りている側が返済した証明が出来ないとなると、返済はされていない事になってしまう可能性がとても高いという事だ。

もちろん返済した兄からすれば寝耳に水の話であって、弁護士も、これだけきょうだいが受領したと思われる金銭が多数出てきた事は想定外であったのかもしれない。

ただ、我々の弁護士も馬鹿ではない。

調停の場で、即座に父の帳簿の全てを提出するよう姉へ求めたのである。
金銭を渡した証拠(父の帳簿)があるとするならば、その中に、姉への贈与や兄の返済が記載されている可能性がとても高いからだ。

姉が提出した帳簿は我々への金銭の移動が記載されていた部分のみ提出されており、その他の部分は提出されていないし、その他の帳簿の提出を拒んでいるとの事である。

そこで、弁護士より我々に対し提案が出される。

とりあえずは調停という場であるので、こちらからの和解案を出してみましょうと言う事であった。

和解案は、父死亡時の段階で残っていた預金と不動産を遺留分の比率で計算し、その金額を支払ってもらい、不動産に対してはその比率分の持分登記をしてもらうという案であった。

そもそもそれを望んでいたので我々には何の文句も無いし、特にお金に困っているきょうだいでは無いのでいくらでもいいが、姉に父の遺産が全て渡ってしまう事が許せないだけである。
言うなれば、取れるものは全て取りたいと言う気持ちである。
実際、弁護士には訴訟費用全部引いて残りは全部弁護士に報酬として支払いますと言ってぐらいである。

そこで気になってくるのが遺留分の比率である。

遺留分は本来もらえていたはずの比率(我々の件であれば、4人きょうだいであるので4分の1づつ)の半分(4分の1の半分であるから8分の1づつ)となる。

弁護士にはそれでお願いしますと伝えその日を終える事となり、案をまとめた書面をメールで送るという事であった。